「英語の4技能」と言えば、今や英語教育のトレンドになっています。大学に入試においても、4技能を総合的に判断する流れにはなっています(挫折しましたが)。
そもそも、英語の4技能とは、「読む」「書く」「聞く」「話す」のことです。日本の英語教育は、伝統的に、「読む」「書く」を重視してきました。2000年代になり、英語を「話せない」「聞けない」ことが強く問題視されるようになり、大学入試センター試験にも、リスニング問題が導入されます。その中でも、依然として、入試では、「読む」「書く」が中心でしたが、発音アクセント問題、会話問題、商業広告や案内文の読解など、実用性を問う問題も出題されるようになります。また、最近では、「聞く」「話す」のスキルを高めることがさらに強く叫ばれるようになり、小学校で英語の授業をするようになったり、大学入試で4技能試験の導入が検討されたり、英語教育が大きく変わろうとしています。
ただ、センター試験(共通テスト)では、「聞く」はリスニング問題でカバーできるとしても、「話す」を問うことには壁があります。60万人の受験生全員に面接試験を課すことは日程的に難しいでしょう。TOEFLなどのようにコンピューターベースで実施するにしても、60万人分のコンピューターを用意しなければなりません。そこで、既に4技能のスキルを測っている民間の試験(英検、TOEFLなど)を導入する案が浮上しました。とはいえ、センター試験ほど、密に会場を設置していないこと、受験料が高額になり世帯収入により不公平が生じることなどから、反対を唱える声が強くなり、政府が延期を決定しました。
実際には、4技能を重視する大学は存在しており、大学が個別に民間試験を導入したり、英語による面接を課したりすることもあります。
私は、アメリカの大学を卒業しており、当塾では英語を担当しています。私自身は、そもそも「聞く」「話す」が何を目的にしているのかが、気になります。例えば、英米に旅行に行き、そこで買い物をするために「聞く」「話す」をしたいのか、または大学などの高等教育やビジネスの場で「聞く」「話す」をしたいのかによって、目指す方向性は全く違います。旅行の買い物程度であれば、お目当ての商品を指さし、「this one」と言えば、それでOKです。ホテルのチェックインも、フロントで「check in, please」と言えば、それで十分です。中学1年生~2年生程度の単語力があれば、それを繋ぎ合わせるだけで、会話は成り立つでしょう。主語+述語を伴った正確な英語を話す必要は全くありません。
しかし、高等教育やビジネスの場となると、正確な英語が求められます。大学や大学院で書くエッセイ(論文)が単語の羅列ではおかしいですし、単語を繋ぎ合わせただけで商談をするのはムリがあるでしょう。そうなると、文法力が必要になります。
私自身は、アメリカの大学で学んだとき、他の留学生と同じく英語に苦労はしましたが、無事に4年間で卒業しています。日本で、英語の英才教育を受けていたわけではありません。帰国子女でもありませんし、英会話学校にも通っていません。大学では、エッセイを書いたり、プレゼンテーションをしたりすることが多くありましたが、そのときは、正確な英語が求められました。日本の中学校、高校で学んだ英文法は、非常に役立ったような気がします。
日本の英語教育は、旅行でちょっとした会話をするのが目的ではなく、高等教育やビジネスの場で使える英語力を養うのが目的だと思います。実際に、共通テストのリスニング試験の試行問題を見ても、日常会話を想定した問題も出題されていますが、高等教育を想定した問題も出題されています。一方で、英語が「話せない」「聞けない」という多くの方々は、旅行などを想定して、そのように言っているように思います。
日本の英語教育の方向性が変わらない限りは、文法を重視した今のスタイルは、大きく変わらないでしょう。個人的には、このスタイルは、特に間違っていないと思っています。その上で、「話す」「聞く」の能力を、どのように養っていくのか、という議論になると思います。確かに、4技能がバランス良く向上するのが理想ですので、それを、大学入試(高校入試でも)でどのように測っていくのか、今後に注目しましょう。
プロド個別指導塾
塾長 小澤典生